私には、この部屋へはひつた時から、こだはつてゐたものが一つあつた。
それは私が蟹田でつい悪口を言つてしまつたあの五十年配の作家の随筆集が、Mさんの机の上にきちんと置かれてゐる事であつた。
愛読者といふものは偉いもので、私があの日、蟹田の観瀾山であれほど口汚くこの作家を罵倒しても、この作家に対するMさんの信頼はいささかも動揺しなかつたものと見える。
私には、この部屋へはひつた時から、こだはつてゐたものが一つあつた。
それは私が蟹田でつい悪口を言つてしまつたあの五十年配の作家の随筆集が、Mさんの机の上にきちんと置かれてゐる事であつた。
愛読者といふものは偉いもので、私があの日、蟹田の観瀾山であれほど口汚くこの作家を罵倒しても、この作家に対するMさんの信頼はいささかも動揺しなかつたものと見える。