まことならば、津軽が、ほんの少しでも中央の政局を動かしたのは、実にこれ一つといふ事になつて、この安東氏一族の内訌は、津軽の歴史に特筆大書すべき光栄ある記録とでも言はなければならなくなる。
いまの青森県の太平洋寄りの地方は古くから糠部と称する蝦夷地であつたが、鎌倉時代以後、ここに甲州武田氏の一族南部氏が移り住み、その勢ひ頗る強大となり、吉野、室町時代を経て、秀吉の全国統一に到るまで、津軽はこの南部と争ひ、津軽に於いては安東氏のかはりに津軽氏が立ち、どうやら津軽一国を安堵し、津軽氏は十二代つづいて、明治維新、藩主承昭は藩籍を謹んで奉還したといふのが、まあ、津軽の歴史の大略である。
この津軽氏の遠祖に就いては諸説がある。