岩木山の美しく見える土地には、いや、もう言ふまい。
こんな話は、えてして差しさはりの多いものだから、ただ町を一巡しただけの、ひやかしの旅人のにはかに断定を下すべき筋合のものではないかも知れない。
その日も、ひどくいい天気で、停車場からただまつすぐの一本街のコンクリート路の上には薄い春霞のやうなものが、もやもや煙つてゐて、ゴム底の靴で猫のやうに足音も無くのこのこ歩いてゐるうちに春の温気にあてられ、何だか頭がぼんやりして来て、木造警察署の看板を、木造警察署と読んで、なるほど木造の建築物、と首肯き、はつと気附いて苦笑したりなどした。