すると多分一口も開くまいと思った兄が、急に赭顔の客に向って、「さすがに我も平家なり物語り申してとか、始めてとかいう句がありましたが、あのさすがに我も平家なりという言葉が大変面白うございました」と云った。
兄は元来正直な男で、かつ己れの教育上嘘を吐かないのを、品性の一部分と心得ているくらいの男だから、この批評に疑う余地は少しもなかった。
けれども不幸にして彼の批評は謡の上手下手でなくって、文章の巧拙に属する話だから、相手にはほとんど手応がなかった。
すると多分一口も開くまいと思った兄が、急に赭顔の客に向って、「さすがに我も平家なり物語り申してとか、始めてとかいう句がありましたが、あのさすがに我も平家なりという言葉が大変面白うございました」と云った。
兄は元来正直な男で、かつ己れの教育上嘘を吐かないのを、品性の一部分と心得ているくらいの男だから、この批評に疑う余地は少しもなかった。
けれども不幸にして彼の批評は謡の上手下手でなくって、文章の巧拙に属する話だから、相手にはほとんど手応がなかった。