兄は元来正直な男で、かつ己れの教育上嘘を吐かないのを、品性の一部分と心得ているくらいの男だから、この批評に疑う余地は少しもなかった。
けれども不幸にして彼の批評は謡の上手下手でなくって、文章の巧拙に属する話だから、相手にはほとんど手応がなかった。
こう云う場合に馴れた父は「いやあすこは非常に面白く拝聴した」と客の謡いぶりを一応賞めた後で、「実はあれについて思い出したが、大変興味のある話がある。
兄は元来正直な男で、かつ己れの教育上嘘を吐かないのを、品性の一部分と心得ているくらいの男だから、この批評に疑う余地は少しもなかった。
けれども不幸にして彼の批評は謡の上手下手でなくって、文章の巧拙に属する話だから、相手にはほとんど手応がなかった。
こう云う場合に馴れた父は「いやあすこは非常に面白く拝聴した」と客の謡いぶりを一応賞めた後で、「実はあれについて思い出したが、大変興味のある話がある。