二千八百九十九米。
笠井さんはこのごろ、山の高さや、都会の人口や、鯛の値段などを、へんに気にするようになって、そうして、よくまた記憶している。
もとは、笠井さんも、そのような調査の記録を、写実の数字を、極端に軽蔑して、花の名、鳥の名、樹木の名をさえ俗事と見なして、てんで無関心、うわのそらで、謂わば、ひたすらにプラトニックであって、よろずに疎いおのれの姿をひそかに愛し、高尚なことではないかとさえ考え、甘い誇りにひたっていたものであるが、このごろ、まるで変ってしまった。
二千八百九十九米。
笠井さんはこのごろ、山の高さや、都会の人口や、鯛の値段などを、へんに気にするようになって、そうして、よくまた記憶している。
もとは、笠井さんも、そのような調査の記録を、写実の数字を、極端に軽蔑して、花の名、鳥の名、樹木の名をさえ俗事と見なして、てんで無関心、うわのそらで、謂わば、ひたすらにプラトニックであって、よろずに疎いおのれの姿をひそかに愛し、高尚なことではないかとさえ考え、甘い誇りにひたっていたものであるが、このごろ、まるで変ってしまった。