佐吉さんから、手紙で様子を聞いているだけで、まだ其の家を見た事も無かったので、行ってみて具合が悪いようだったらすぐ帰ろう、具合がいいようだったら一夏置いて貰って、小説を一篇書こう、そう思って居たのでありましたが、心ならずも三人の友人を招待してしまったので、私は、とにかく三島迄の切符を四枚買い、自信あり気に友人達を汽車に乗せたものの、さてこんなに大勢で佐吉さんの小さい酒店に御厄介になっていいものかどうか、汽車の進むにつれて私の不安は増大し、そのうちに日も暮れて、三島駅近くなる頃には、あまりの心細さに全身こまかにふるえ始め、幾度となく涙ぐみました。
私は自身のこの不安を、友人に知らせたくなかったので、懸命に佐吉さんの人柄の良さを語り、三島に着いたらしめたものだ、三島に着いたらしめたものだと、自分でもイヤになる程、その間の抜けた無意味な言葉を幾度も幾度も繰返して言うのでした。
あらかじめ佐吉さんに電報を打って置いたのですが、はたして三島の駅に迎えに来てくれて居るかどうか、若し迎えに来て居てくれなかったら、私は此の三人の友人を抱えて、一体どうしたらいいでしょう。