兄がなくなったのは、私が大学へはいったとしの初夏でありましたが、そのとしのお正月には、応接室の床の間に自筆の掛軸を飾りました。
半折に、「この春は、仏心なども出で、酒もあり、肴もあるをよろこばぬなり。
と書かれていて、訪問客は、みんな大笑いして、兄もにやにや笑っていましたが、それは、れいの兄のミステフィカシオンでは無く、本心からのものだったのでしょうけれど、いつも、みんなを、かつぐものだから、訪問客たちも、ただ笑って、兄のいのちを懸念しようとはしないのでした。
兄がなくなったのは、私が大学へはいったとしの初夏でありましたが、そのとしのお正月には、応接室の床の間に自筆の掛軸を飾りました。
半折に、「この春は、仏心なども出で、酒もあり、肴もあるをよろこばぬなり。
と書かれていて、訪問客は、みんな大笑いして、兄もにやにや笑っていましたが、それは、れいの兄のミステフィカシオンでは無く、本心からのものだったのでしょうけれど、いつも、みんなを、かつぐものだから、訪問客たちも、ただ笑って、兄のいのちを懸念しようとはしないのでした。