私はハンカチで水洟を押えながら、無言で歩いて、さすがに浮かぬ心地でした。
三鷹駅から省線で東京駅迄行き、それから市電に乗換え、その若い記者に案内されて、先ず本社に立寄り、応接間に通されて、そうして早速ウイスキイの饗応にあずかりました。
思うに、太宰はあれは小心者だから、ウイスキイでも飲ませて少し元気をつけさせなければ、浮浪者とろくに対談も出来ないに違いないという本社編輯部の好意ある取計らいであったのかも知れませんが、率直に言いますと、そのウイスキイは甚だ奇怪なしろものでありました。
私はハンカチで水洟を押えながら、無言で歩いて、さすがに浮かぬ心地でした。
三鷹駅から省線で東京駅迄行き、それから市電に乗換え、その若い記者に案内されて、先ず本社に立寄り、応接間に通されて、そうして早速ウイスキイの饗応にあずかりました。
思うに、太宰はあれは小心者だから、ウイスキイでも飲ませて少し元気をつけさせなければ、浮浪者とろくに対談も出来ないに違いないという本社編輯部の好意ある取計らいであったのかも知れませんが、率直に言いますと、そのウイスキイは甚だ奇怪なしろものでありました。