家内の話に依れば、その湯村の大衆浴場は、たいへんのんびりして、浴客も農村のじいさんばあさんたちで、皮膚病に特効があるといっても、皮膚病らしい人は、ひとりも無く、家内のからだが一等きたないくらいで、浴室もタイル張で清潔であるし、お湯のぬるいのが欠点であるけれども、みんな三十分も一時間も、しゃがんでお湯にひたったまま、よもやまの世間話を交して、とにかく別天地であるから、あなたも、一度おいでなさい、ということであった。
早朝、練兵場の草原を踏みわけて行くと、草の香も新鮮で、朝露が足をぬらして冷や冷やして、心が豁然とひらけ、ひとりで笑い出したくなるくらいである、という家内の話であった。
私は暑熱をいい申しわけにして、仕事を怠けていて、退屈していた時であったから、早速行ってみることにした。