けれども、その時、沢田先生が酔っておっしゃった事は、口から出まかせの冗談では無かったのです。
それから十日ほど経ったら、また仔細らしい顔つきをして、家へおいでになって、さて、それでは少しずつ、綴方の基本練習をはじめましょうね、とおっしゃったので、私は、まごついてしまいました。
後でわかった事ですが、沢田先生は、小学校で生徒の受験勉強の事から、問題を起し、やめさせられ、それから、くらしが思うように行かず、昔の教え子の家を歴訪しては無理矢理、家庭教師みたいな形になりすまし、生活の方便にしていらっしゃったというような具合いなのでした。