しかし、私も若干馬齢を加えるに及び、そのような風変りの位置が、一個の男児としてどのように不面目、破廉恥なものであるかに気づいていたたまらなくなりまして、「こぞの道徳いまいずこ」という題の、多少、分別顔の詩集を出版いたしましたところ、一ぺんで私は完全にダメになりました。
ダメのまた下のダメという、謂わば「ほんもの」のダメという事になりまして、私は詩壇に於いて失脚し、また、それまでの言語に絶した窮乏生活の悪戦苦闘にも疲れ果て、ついに秋風と共に単身都落ちというだらし無い運命に立ちいたったのでございます。
つまり私という老人は、何一つ見るべきところが無い、それが私の本領、などと言って居直って威張り得る筋合いの事では決してございませんが、そのような男が、この地方の教育会のお歴々に向って、いったい何を講演したらよろしいのでありましょうか。