そもそも吉原の女と言えば、女性の中で最もみじめで不仕合せで、そうして世の同情と憐憫の的である筈でございましたが、実際に見学してみますると、どうしてなかなか勢力のあるもので、ほとんどもう貴婦人みたいにわがままに振舞い、私は呶鳴られはせぬかとその夜は薄氷を踏むが如く言語動作をつつしみ、心しずかにお念仏など申し生きた心地もございませんでした。
お念仏のおかげかどうか、その夜は別段叱り飛ばされる事もなく、きぬぎぬの朝を迎えましたが、女はお茶を一つ飲んで行け、と言います。
おいらんの中でも、あれは少し位の高いほうだったのかも知れません、ちょっと威厳さえ持っていました。