そうして、そのダメな男は、いよいよただおのずからダメになるばかりで、ついに単身ボロをまとって都落ちをして、いまは弟の居候という事になって何一つ見るべきところの無い生涯で、いまさら誰をも、うらむ資格も何もございませんが、けれども、それでも、ああ、あの時あの女が、あれほど私に意地悪くしなかったならば、私も多少のプライドと力を得て、ダメはダメなりに何とか形のついた男になっていたのではなかろうかしら、と老いの寝ざめに、わが幼少からの悲惨な女難のかずかずを反芻してみて、やっぱり、胸をかきむしりたい思いに駆られる事もございますのです。
私は東京に於いて、三人の女房に逃げられました。
最初の女房もひどい奴でしたが、二番目のは、なおたちが悪く、三番目のは、逃げるどころか、かえって私を追い出しました。