へんな書き置きみたいなものを残して行きましたが、それがまた何とも不愉快、あなたはユダヤ人だったのですね、はじめてわかりました、虫にたとえると、赤蟻です、と書いてあるのです。
何の事だか、まるでナンセンスのようでございますが、しかし、感覚的にぞっとするほどイヤな、まるで地獄の妖婆の呪文みたいな、まことに異様な気持のする言葉で、あんな脳の悪い女でも、こんな不愉快きわまる戦慄の言葉を案出し投げつけて寄こす事が出来るとは、実に女性というものには、底の知れないおそろしいところがあるとつくづく感じ入りましたのでございます。
けれどもそれは、まあ、文学少女の、文学的な悪態で、二番目の女房の現実的な悪辣さに較べると、まだしも我慢が出来ると言っていいかも知れませんでございます。