それでも、学校を出てからは、芹川さんのちょいちょい持って来て下さる小説本を、退屈まぎれに借りて読んでいるうちに、少しは小説の面白さも、わかって来たようでした。
けれども、私の面白いと思った本は、芹川さんは余り、いいとはおっしゃらず、芹川さんのいいとおっしゃる本は、私には、意味がよくわかりませんでした。
私は鴎外の歴史小説が好きでしたけれど、芹川さんは、私を古くさいと言って笑って、鴎外よりは有島武郎のほうが、ずっと深刻だと私に教えて、そのおかたの本を、二三冊持って来て下さいましたけれど、私が読んでも、ちっともわかりませんでした。