芹川さんは、おいでになる度毎に何か新刊の雑誌やら、小説集やらを持って来られて、いろいろと私に小説の筋書や、また作家たちの噂話を聞かせて下さるのですが、どうも余り熱中しているので、可笑しいと思って居りましたところが、或る日とうとう芹川さんは、その熱中の原因らしいものを私に発見されてしまいました。
女の友達というものは、ちょっとでも親しくなると、すぐにアルバムを見せ合うものでございますが、いつか、芹川さんは大きな写真帖を持って来て、私に見せて下さいましたけれど、私は芹川さんの、うるさいほど叮嚀な説明を、いい加減に合槌打って拝聴しながら一枚一枚見ていって、そのうちに、とても綺麗な学生さんが、薔薇の花園の背景の前に、本を持って立っている写真がありましたので、私はおや綺麗なおかたねえ、と思わず言ってしまって、なぜだか顔が熱くなりました。
すると芹川さんは、いきなり、いやっと言って私からアルバムをひったくってしまったので、私には、すぐははあと、気がつきました。