いつそ「私」としてもよいのだが、僕はこの春、「私」といふ主人公の小説を書いたばかりだから二度つづけるのがおもはゆいのである。
僕がもし、あすにでもひよつくり死んだとき、あいつは「私」を主人公にしなければ、小説を書けなかつた、としたり顏して述懷する奇妙な男が出て來ないとも限らぬ。
ほんたうは、それだけの理由で、僕はこの大庭葉藏をやはり押し通す。
いつそ「私」としてもよいのだが、僕はこの春、「私」といふ主人公の小説を書いたばかりだから二度つづけるのがおもはゆいのである。
僕がもし、あすにでもひよつくり死んだとき、あいつは「私」を主人公にしなければ、小説を書けなかつた、としたり顏して述懷する奇妙な男が出て來ないとも限らぬ。
ほんたうは、それだけの理由で、僕はこの大庭葉藏をやはり押し通す。