女のひとは、前にも申しましたように虚栄ばかりで読むのですから、やたらに上品ぶった避暑地の恋や、あるいは思想的な小説などを好みますが、私は、そればかりでなく、貴下の小説の底にある一種の哀愁感というものも尊いのだと信じました。
どうか、貴下は、御自身の容貌の醜さや、過去の汚行や、または文章の悪さ等に絶望なさらず、貴下独特の哀愁感を大事になさって、同時に健康に留意し、哲学や語学をいま少し勉強なさって、もっと思想を深めて下さい。
貴下の哀愁感が、もし将来に於いて哲学的に整理できたならば、貴下の小説も今日の如く嘲笑せられず、貴下の人格も完成される事と存じます。