甲府の妻の里では、父も母も亡くなり、姉たちは嫁ぎ、一ばん下の子は男で、それが戸主になっているのだが、その二、三年前に大学を出てすぐ海軍へ行き、いま甲府の家に残っている者は、その男の子のすぐ上の姉で、私の妻のすぐの妹という具合いになっている二十六だか七だかの娘がひとり住んでいるきりであった。
その娘が、海軍に行っている男の子と手紙で甲府の家の事に就いてしょっちゅうこまごまと相談し合っている様子であった。
私はその二人の義兄という事になっているわけだが、しかし、義兄なんてものは、その家に就いて何の実権のあるわけはない。