けれども画壇の一部に於いては、鶴見はいつも金庫の傍で暮している、という奇妙な囁きも交わされているらしく、とすると仙之助氏の生活の場所も合計三つになるわけであるが、そのような囁きは、貧困で自堕落な画家の間にだけもっぱら流行している様子で、れいのヒステリイの復讐的な嘲笑に過ぎないらしいところもあるので、そのまま信用する事も出来ない。
とにかく世間一般は、仙之助氏を相当に尊敬していた。
勝治は父に似ず、からだも大きく、容貌も鈍重な感じで、そうしてやたらに怒りっぽく、芸術家の天分とでもいうようなものは、それこそ爪の垢ほども無く、幼い頃から、ひどく犬が好きで、中学校の頃には、闘犬を二匹も養っていた事があった。