嘘、とはっきり知りながら、汽車に乗り、馬車に乗り、雪道歩いて、わたくしたち親子三人、信濃の奥まで、まいりました。
いま、思い出しても、せつなくなります。
信濃の山奥の温泉に宿をとり、それからまる一年間、あの子は、降っても照っても父のお伴して山を歩きまわり、日が暮れて宿へかえっては、父の言うこと、それは芝居と思えないほど、熱心に聞いて、ふたりで何かと研究し、相談し、あしたは大丈夫だ、あしたは大丈夫だと、お互い元気をつけ合って、そうして寝て、また朝早く、山へ出かけて、ほうぼう父に引っぱりまわされ、さんざ出鱈目の説明聞かされて、それでも、いちいち深くうなずいて、へとへとになって帰って来ました。