一生にいちどの晴の日に、――峠の向ふ側から、反対側の船津か、吉田のまちへ嫁入りするのであらうが、その途中、この峠の頂上で一休みして、富士を眺めるといふことは、はたで見てゐても、くすぐつたい程、ロマンチックで、そのうちに花嫁は、そつと茶店から出て、茶店のまへの崖のふちに立ち、ゆつくり富士を眺めた。
脚をX形に組んで立つてゐて、大胆なポオズであつた。
余裕のあるひとだな、となほも花嫁を、富士と花嫁を、私は観賞してゐたのであるが、間もなく花嫁は、富士に向つて、大きな欠伸をした。
一生にいちどの晴の日に、――峠の向ふ側から、反対側の船津か、吉田のまちへ嫁入りするのであらうが、その途中、この峠の頂上で一休みして、富士を眺めるといふことは、はたで見てゐても、くすぐつたい程、ロマンチックで、そのうちに花嫁は、そつと茶店から出て、茶店のまへの崖のふちに立ち、ゆつくり富士を眺めた。
脚をX形に組んで立つてゐて、大胆なポオズであつた。
余裕のあるひとだな、となほも花嫁を、富士と花嫁を、私は観賞してゐたのであるが、間もなく花嫁は、富士に向つて、大きな欠伸をした。