と、おかみさんは言ふのであるが、私は、人の見てゐるまへでは、仕事のできないたちなので、それは断つた。
おかみさんは心配して、峠の麓の吉田へ行き、炬燵をひとつ買つて来た。
私は二階の部屋でそれにもぐつて、この茶店の人たちの親切には、しんからお礼を言ひたく思つて、けれども、もはやその全容の三分の二ほど、雪をかぶつた富士の姿を眺め、また近くの山々の、蕭条たる冬木立に接しては、これ以上、この峠で、皮膚を刺す寒気に辛抱してゐることも無意味に思はれ、山を下ることに決意した。
と、おかみさんは言ふのであるが、私は、人の見てゐるまへでは、仕事のできないたちなので、それは断つた。
おかみさんは心配して、峠の麓の吉田へ行き、炬燵をひとつ買つて来た。
私は二階の部屋でそれにもぐつて、この茶店の人たちの親切には、しんからお礼を言ひたく思つて、けれども、もはやその全容の三分の二ほど、雪をかぶつた富士の姿を眺め、また近くの山々の、蕭条たる冬木立に接しては、これ以上、この峠で、皮膚を刺す寒気に辛抱してゐることも無意味に思はれ、山を下ることに決意した。