彼は家のなかだけでなく、野原や田圃をもひとりで散歩した。
野原の赤い木の葉や田圃の浮藻の花は彼も輕蔑して眺めることができたけれども、耳をかすめて通る春の風と、ひくく騷いでゐる秋の滿目の稻田とは、彼の氣にいつてゐた。
寢てからも、むかし讀んだ小型の詩集や、眞紅の表紙に黒いハムマアの畫かれてあるやうな、そんな書物を枕元に置くことは、めつたになかつた。
彼は家のなかだけでなく、野原や田圃をもひとりで散歩した。
野原の赤い木の葉や田圃の浮藻の花は彼も輕蔑して眺めることができたけれども、耳をかすめて通る春の風と、ひくく騷いでゐる秋の滿目の稻田とは、彼の氣にいつてゐた。
寢てからも、むかし讀んだ小型の詩集や、眞紅の表紙に黒いハムマアの畫かれてあるやうな、そんな書物を枕元に置くことは、めつたになかつた。