銀座のその雑誌社から日本橋のアパートへ帰るのに、省線か徒歩か、いずれにしても、新橋で飲むのが一ばん便利だったものですから、僕はたいていあの新橋辺の屋台を覗きまわっていたのでした。
いつか、柳田という、れいの抜け目の無い、自分で自分の顔の表情を鏡を見なくても常に的確に感知できると誇称している友人、兼、編輯部長に連れられて、新橋駅のすぐ近くの川端に建って在るおでん屋へ飲みに行きました。
そこもまた、屋台には違い無いのですが、奥が深く、土間にさまざまの腰掛けが並べられていて、それこそ、「お順につめる」と、十人くらいの客が楽に飲み食い出来たのです。