狐の女中は、にこりともせず、あれは近所のお百姓の娘さんで毎日あそこで宿の浴衣や蒲団を繕っているのです、いいひとが出征したので此頃さびしそうですね、と感動の無い口調で言って、私の顔をまっすぐに見つめて、こんどは、あの人に眼をつけたのですか、と失敬な事まで口走るので、私も、むっとしました。
すくなくとも君たちよりは上等だね、と言ってやろうかと思いましたが、怺えて、ただ苦笑して見せました。
お昼頃、廊下の籐椅子に腰かけて谷底の渓流を見おろしていたら、釜が淵という、一丈くらいの小さい滝の落ちているあたりに女の人が、しゃがんでいるのにふと気が附いて、よくよく見ると、どうもあの土蔵のひとのようなので、私は、いたたまらなくなりました。