私の家は、この三鷹駅から、三曲りも四曲りもして歩いて二十分以上かかる畑地のまん中に在るのだが、そこには訪ねて来る客も無し、私は仕事でもない限りは、一日いっぱい毛布にくるまって縁側に寝ころんでいて、読書にも疲れて、あくびばかりを連発し、新聞を取り上げ、こども欄の考えもの、亀、鯨、兎、蛙、あざらし、蟻、ペリカン、この七つの中で、卵から生まれるものは何々でしょう、という問題に就いて、ちょっと頭をひねってみたり、それもつまらなくなり、あくびの涙がつつと頬を走って流れても、それにかまわず、ぼんやり庭の向うの麦畑を眺めて、やがて日が暮れるというような、半病人みたいな生活をしているのだから、いま、ただちに勇んで、たのしい我が家に引き返そうという気力も出て来ない。
私は、家の方角とは反対の、玉川上水の土堤のほうへ歩いていった。
四月なかば、ひるごろの事である。