――ふっと思い出したが、ヴェルレエヌ、ね、あの人、一日、教会へ韋駄天走りに走っていって、さあ私は、ざんげする、告白する、何もかも白状する、ざんげ聴聞僧は、どこに居られる、さあ、さあ私は言ってしまう、とたいへんな意気込で、ざんげをはじめたそうですが、聴聞僧は、清浄の眉をそよとも動がすことなく、窓のそとの噴水を見ていて、ヴェルレエヌの泣きわめきつつ語りつづけるめんめんの犯罪史の、一瞬の切れ目に、すぽんと投入した言葉は、『あなたはけものと交った経験をお持ちですか?
ヴェル氏、仰天して、ころげるようにして廊下へ飛び出し、命からがら逃げかえったそうで、僕は、どうも、人のざんげを聞くことが得手じゃないのです。
いまはやりの言葉で言えば心臓が弱いのです。