見あげると、その崖のうえには、やしろでもあるのか、私の背丈くらいの小さい鳥居が立っていて、常磐木が、こんもりと繁り、その奥ゆかしさが私をまねいて、私は、すすきや野いばらを掻きわけ、崖のうえにゆける路を捜したけれども、なかなか、それらしきものは見当らず、ついには、崖の赤土に爪を立て立て這い登り、月の輪の無い熊、月の輪の無い熊、と二度くりかえして呟いた。
やっとのことで崖の上までたどりつき、脚下の様を眺めたら、まばらに散在している鎌倉の街の家々の灯が、手に取るように見えたのだ。
熊は、うろうろ場所を捜した。