その頃になると、自分も、敢えて堀木の案内に頼らずとも、ひとりで電車にも乗れるし、また、歌舞伎座にも行けるし、または、絣の着物を着て、カフエにだってはいれるくらいの、多少の図々しさを装えるようになっていたのです。
心では、相変らず、人間の自信と暴力とを怪しみ、恐れ、悩みながら、うわべだけは、少しずつ、他人と真顔の挨拶、いや、ちがう、自分はやはり敗北のお道化の苦しい笑いを伴わずには、挨拶できないたちなのですが、とにかく、無我夢中のへどもどの挨拶でも、どうやら出来るくらいの「伎倆」を、れいの運動で走り廻ったおかげ?
または、女の?