ヒラメの家では食事はいつもその小僧がつくり、二階のやっかい者の食事だけは別にお膳に載せて小僧が三度々々二階に持ち運んで来てくれて、ヒラメと小僧は、階段の下のじめじめした四畳半で何やら、カチャカチャ皿小鉢の触れ合う音をさせながら、いそがしげに食事しているのでした。
三月末の或る夕方、ヒラメは思わぬもうけ口にでもありついたのか、または何か他に策略でもあったのか、(その二つの推察が、ともに当っていたとしても、おそらくは、さらにまたいくつかの、自分などにはとても推察のとどかないこまかい原因もあったのでしょうが)自分を階下の珍らしくお銚子など附いている食卓に招いて、ヒラメならぬマグロの刺身に、ごちそうの主人みずから感服し、賞讃し、ぼんやりしている居候にも少しくお酒をすすめ、
「どうするつもりなんです、いったい、これから」