飲んだなんて、ウソ、ウソ、ウソ」
薄暗い店の中に坐って微笑しているヨシちゃんの白い顔、ああ、よごれを知らぬヴァジニティは尊いものだ、自分は今まで、自分よりも若い処女と寝た事がない、結婚しよう、どんな大きな悲哀がそのために後からやって来てもよい、荒っぽいほどの大きな歓楽を、生涯にいちどでいい、処女性の美しさとは、それは馬鹿な詩人の甘い感傷の幻に過ぎぬと思っていたけれども、やはりこの世の中に生きて在るものだ、結婚して春になったら二人で自転車で青葉の滝を見に行こう、と、その場で決意し、所謂「一本勝負」で、その花を盗むのにためらう事をしませんでした。
そうして自分たちは、やがて結婚して、それに依って得た歓楽は、必ずしも大きくはありませんでしたが、その後に来た悲哀は、凄惨と言っても足りないくらい、実に想像を絶して、大きくやって来ました。