自分の生れて育った町から汽車で四、五時間、南下したところに、東北には珍らしいほど暖かい海辺の温泉地があって、その村はずれの、間数は五つもあるのですが、かなり古い家らしく壁は剥げ落ち、柱は虫に食われ、ほとんど修理の仕様も無いほどの茅屋を買いとって自分に与え、六十に近いひどい赤毛の醜い女中をひとり附けてくれました。
それから三年と少し経ち、自分はその間にそのテツという老女中に数度へんな犯され方をして、時たま夫婦喧嘩みたいな事をはじめ、胸の病気のほうは一進一退、痩せたりふとったり、血痰が出たり、きのう、テツにカルモチンを買っておいで、と言って、村の薬屋にお使いにやったら、いつもの箱と違う形の箱のカルモチンを買って来て、べつに自分も気にとめず、寝る前に十錠のんでも一向に眠くならないので、おかしいなと思っているうちに、おなかの具合がへんになり急いで便所へ行ったら猛烈な下痢で、しかも、それから引続き三度も便所にかよったのでした。
不審に堪えず、薬の箱をよく見ると、それはヘノモチンという下剤でした。