「どれどれ、あら、ほんとう。
いまに、お豆がたくさん生るわよ。
玄関のわきに、十坪くらいの畑地があって、以前は私がそこへいろいろ野菜を植えていたのだけれども、子供が三人になって、とても畑のほうにまで手がまわらず、また夫も、昔は私の畑仕事にときどき手伝って下さったものなのに、ちか頃はてんで、うちの事にかまわず、お隣りの畑などは旦那さまがきれいに手入れなさって、さまざまのお野菜がたくさん見事に出来ていて、うちの畑はそれに較べるとはかなく恥かしくただ雑草ばかり生えしげって、マサ子が配給のお豆を一粒、土にうずめて水をかけ、それがひょいと芽を出して、おもちゃも何も持っていないマサ子にとって、それが唯一のご自慢の財産で、お隣りへ遊びに行っても、うちのお豆、うちのお豆、とはにかまずに吹聴している様子なのです。