これからは、何でもこの調子で、軽く夫に甘えて、冗談を言い、ごまかしだって何だってかまわない、正しい態度で無くったってかまわない、そんな、道徳なんてどうだっていい、ただ少しでも、しばらくでも、気持の楽な生き方をしたい、一時間でも二時間でもたのしかったらそれでいいのだ、という考えに変って、夫をつねったりして、家の中に高い笑い声もしばしば起るようになった矢先、或る朝だしぬけに夫は、温泉に行きたいと言い出しました。
「頭がいたくてね、暑気に負けたのだろう。
信州のあの温泉、あのちかくには知ってる人もいるし、いつでもおいで、お米持参の心配はいらない、とその人が言っているんだ。