実は、こないだ或る無筆の親に逢い、こんな川柳などを、ふっと思い出したというだけの事なのである。
罹災したおかたには皆おぼえがある筈だが、罹災をすると、へんに郵便局へ行く用事が多くなるものである。
私が二度も罹災して、とうとう津軽の兄の家へ逃げ込んで居候という身分になったのであるが、簡易保険だの債券売却だのの用事でちょいちょい郵便局に出向き、また、ほどなく私は、仙台の新聞に「パンドラの匣」という題の失恋小説を連載する事になって、その原稿発送やら、電報の打合せやらで、いっそう郵便局へ行く度数が頻繁になった。