その鳥は、蝙蝠に似ていたが、片方の翼の長さだけでも三米ちかく、そうして、その翼をすこしも動かさず、グライダのように音も無く私たちの上、二米くらい上を、すれすれに飛んで行って、そのとき、鴉の鳴くような声でこう言った。
「ここでは泣いてもよろしいが、あの世界では、そんなことで泣くなよ。
私は、それ以来、人間はこの現実の世界と、それから、もうひとつの睡眠の中の夢の世界と、二つの世界に於いて生活しているものであって、この二つの生活の体験の錯雑し、混迷しているところに、謂わば全人生とでもいったものがあるのではあるまいか、と考えるようになった。