テツさんと汐田とは同じ郷里で幼いときからの仲らしく、私も汐田と高等學校の寮でひとつ室に寢起してゐた關係から、折にふれてはこの戀愛を物語られた。
テツさんは貧しい育ちの娘であるから、少々内福な汐田の家では二人の結婚は不承知であつて、それゆゑ汐田は彼の父親と、いくたびとなく烈しい口論をした。
その最初の喧嘩の際、汐田は卒倒せん許りに興奮して、しまひに、滴々と鼻血を流したのであるが、そのやうな愚直な揷話さへ、年若い私の胸を異樣に轟かせたものだ。
テツさんと汐田とは同じ郷里で幼いときからの仲らしく、私も汐田と高等學校の寮でひとつ室に寢起してゐた關係から、折にふれてはこの戀愛を物語られた。
テツさんは貧しい育ちの娘であるから、少々内福な汐田の家では二人の結婚は不承知であつて、それゆゑ汐田は彼の父親と、いくたびとなく烈しい口論をした。
その最初の喧嘩の際、汐田は卒倒せん許りに興奮して、しまひに、滴々と鼻血を流したのであるが、そのやうな愚直な揷話さへ、年若い私の胸を異樣に轟かせたものだ。