私の最初間借してゐた家が大學のぢき近くにあつたので、汐田は入學當時こそほんの二三囘そこへ寄つて呉れたが、環境も思想も音を立てつつ離叛して行つてゐる二人には、以前のやうなわけへだて無い友情はとても望めなかつたのだ。
私のひがみからかも知れないが、あのとき若し、テツさんの上京さへなかつたなら、汐田はきつと永久に私から遠のいて了ふつもりであつたらしい。
汐田は私とむつまじい交渉を絶つてから三年目の冬に、突然、私の郊外の家を訪れてテツさんの上京を告げたのである。
私の最初間借してゐた家が大學のぢき近くにあつたので、汐田は入學當時こそほんの二三囘そこへ寄つて呉れたが、環境も思想も音を立てつつ離叛して行つてゐる二人には、以前のやうなわけへだて無い友情はとても望めなかつたのだ。
私のひがみからかも知れないが、あのとき若し、テツさんの上京さへなかつたなら、汐田はきつと永久に私から遠のいて了ふつもりであつたらしい。
汐田は私とむつまじい交渉を絶つてから三年目の冬に、突然、私の郊外の家を訪れてテツさんの上京を告げたのである。