テツさんは汐田の卒業を待ち兼ねて、ひとりで東京へ逃げて來たのであつた。
そのころには私も或る無學な田舍女と結婚してゐたし、いまさら汐田のその出來事に胸をときめかすやうな、そんな若やいだ氣持を次第にうしなひかけてゐた矢先であつたから、汐田のだしぬけな來訪に幾分まごつきはしたが、彼のその訪問の低意を見拔く事を忘れなかつた。
そんな一少女の出奔を知己の間に言ひふらすことが、彼の自尊心をどんなに滿足させたか。
テツさんは汐田の卒業を待ち兼ねて、ひとりで東京へ逃げて來たのであつた。
そのころには私も或る無學な田舍女と結婚してゐたし、いまさら汐田のその出來事に胸をときめかすやうな、そんな若やいだ氣持を次第にうしなひかけてゐた矢先であつたから、汐田のだしぬけな來訪に幾分まごつきはしたが、彼のその訪問の低意を見拔く事を忘れなかつた。
そんな一少女の出奔を知己の間に言ひふらすことが、彼の自尊心をどんなに滿足させたか。