男子誕生の喜びも束の間、いまはラプンツェルの意味不明の衰弱に、魂も動転し、夜も眠れず、ただ、うろうろ病床のまわりを、まごついているのです。
王子は、やっぱり、しんからラプンツェルを愛していました。
ラプンツェルの顔や姿の美しさ、または、ちがう環境に育った花の、もの珍らしさ、或いは、どこやら憐憫を誘うような、あわれな盲目の無智、それらの事がらにのみ魅かれて王子が夢中で愛撫しているだけの話で、精神的な高い共鳴と信頼から生れた愛情でもなし、また、お互い同じ祖先の血筋を感じ合い、同じ宿命に殉じましょうという深い諦念と理解に結ばれた愛情でもないという理由から、この王子の愛情の本質を矢鱈に狐疑するのも、いけない事です。