それから、さきに決定しよう」と詰め寄り、私は少し考へて、「それは、弱さだ」ドストと言ひかけた時、突然、右手の生垣から赤犬が一匹わんと言つて飛び出し、私は、あつと悲鳴を擧げて體をかはしましたがその犬は、執拗にも私にばかり吠えつき、白い牙をむき出してかかつて來るので、私は今は見榮も外聞もなく、Y君の背後にひたと隱れて、
「だめだ、だめだ、これあいけねえ、わあ、いけねえ」などと意味不明の言語を發するばかりでありました。
Y君は、持つてゐたステツキを振り上げて、悠然とその犬を撃退してくれたのですが、私は一時、死ぬばかりでありました。