舌切雀
私はこの「お伽草紙」といふ本を、日本の國難打開のために敢鬪してゐる人々の寸暇に於ける慰勞のささやかな玩具として恰好のものたらしむべく、このごろ常に微熱を發してゐる不完全のからだながら、命ぜられては奉公の用事に出勤したり、また自分の家の罹災の後始末やら何やらしながら、とにかく、そのひまに少しづつ書きすすめて來たのである。
瘤取り、浦島さん、カチカチ山、その次に、桃太郎と、舌切雀を書いて、一應この「お伽草紙」を完結させようと私は思つてゐたのであるが、桃太郎のお話は、あれはもう、ぎりぎりに單純化せられて、日本男兒の象徴のやうになつてゐて、物語といふよりは詩や歌の趣きさへ呈してゐる。