いつも力無い咳をして、さうして顏色も惡く、朝起きて部屋の障子にはたきを掛け、帚で塵を掃き出すと、もう、ぐつたりして、あとは、一日一ぱい机の傍で寢たり起きたり何やら蠢動して、夕食をすますと、すぐ自分でさつさと蒲團を敷いて寢てしまふ。
この男は、既に十數年來こんな情無い生活を續けてゐる。
未だ四十歳にもならぬのだが、しかし、よほど前から自分の事を翁と署名し、また自分の家の者にも「お爺さん」と呼べと命令してゐる。
いつも力無い咳をして、さうして顏色も惡く、朝起きて部屋の障子にはたきを掛け、帚で塵を掃き出すと、もう、ぐつたりして、あとは、一日一ぱい机の傍で寢たり起きたり何やら蠢動して、夕食をすますと、すぐ自分でさつさと蒲團を敷いて寢てしまふ。
この男は、既に十數年來こんな情無い生活を續けてゐる。
未だ四十歳にもならぬのだが、しかし、よほど前から自分の事を翁と署名し、また自分の家の者にも「お爺さん」と呼べと命令してゐる。