日本のこの新鮮な生氣はどこから來るのか。
彼は周圍の日本人の生活を、異常の緊張を以て、觀察しはじめます。
由來、清國の青年の日本留學の眞意は、日本こそ世界に冠たる文明國と考へてやつて來るのではなく、やはり學ぶべきは西洋の文明ではあるが、日本はすでに西洋の文明の粹を刪節して用ゐるのに成功してゐるのであるから、わざわざ遠い西洋まで行かずともすぐ近くの日本國で學んだ方が安直に西洋の文明を吸收できるといふところに在つたやうで、二十二歳の周樹人もまた、やはり、そのやうな氣持で日本に渡つて來たのは致し方のないところであつたのでありますが、しかし、彼のさまざま細かい觀察の結果、日本人の生活には西洋文明と全く違つた獨自の凜乎たる犯しがたい品位の存する事を肯定せざるを得なくなつたのであります。