昭和十四年五月に「愛と美について」さうして、昭和十五年四月には「皮膚と心」が共に竹村書房より出版せられ、おのおの初版二千部くらゐを市場に送り、間もなく品切れとなつた樣子であるが、用紙不足の爲、竹村書房に於いても再版かなはず、この二つの創作集はしばらく、絶版同樣になつてゐたのである。
しかるにその後、竹村書房に對して、讀者からの直接の註文が、かなりあるので、竹村書房主はその註文を受ける度毎に憂鬱、なんとかして讀者の求めに應じたいと煩悶、あげくの果は一日、著者の陋屋をおとづれ、名案なきかと相談に及ぶ始末であつた。
もとより迂愚の著者である。