そのために、数十年来一度も欠かさなかった胡弓の門附けを、この正月ばかりはやめなければならなかった。
その翌年は、これはまた木之助自身が感冒を患ってうごくことが出来なかった。
味噌屋の御主人が、もう俺が来るずらと思って待ってござるじゃろうに、と仰向に寝ている木之助は、枕元に坐って看病している大きい娘にそう言っては、壁にかかっている胡弓の方を見たのである。
そのために、数十年来一度も欠かさなかった胡弓の門附けを、この正月ばかりはやめなければならなかった。
その翌年は、これはまた木之助自身が感冒を患ってうごくことが出来なかった。
味噌屋の御主人が、もう俺が来るずらと思って待ってござるじゃろうに、と仰向に寝ている木之助は、枕元に坐って看病している大きい娘にそう言っては、壁にかかっている胡弓の方を見たのである。