春吉君が、藤井先生も村の人になったということをしみじみ感じたのは、麦のかられたじぶんのある日だった。
午後の二時間め、春吉君たちは、校庭のそれぞれの場所にじんどって、水彩の写生をしていた。
小使室のまど下に腰をおろして、学校のげんかんと、空色にぬられた朝礼台と、そのむこうのけしのさいているたんざく型の花だんと、ずうっと遠景にこちらをむいて立ってる二宮金次郎の、本を読みつつまきをせおって歩いているみかげ石の像とをとりいれて、一心に彩筆をふるっていた春吉君が、ふと顔をあげて南を見ると、学校の農場と運動場のさかいになっている土手の下に腹ばって、藤井先生が、なにか土手のあちら側にむかってあいずをしていられる。