栄蔵は話に深くひきこまれてゐたので、終つてもしばらくは夢見るやうな眼で、お坊さんの前に立つてゐた。
栄蔵の眼には、まだ青い月夜が見えてをり、その耳には、人の世の美しさをうたふ横笛の音が聞えてゐた。
仇敵を討つ筈だつた人が討つのをやめて、仇敵の家を出てゆきながら、自分はいいことをしたと思つて涙をこぼした、といふことをきいた時、栄蔵もつい貰ひ泣きをした。
栄蔵は話に深くひきこまれてゐたので、終つてもしばらくは夢見るやうな眼で、お坊さんの前に立つてゐた。
栄蔵の眼には、まだ青い月夜が見えてをり、その耳には、人の世の美しさをうたふ横笛の音が聞えてゐた。
仇敵を討つ筈だつた人が討つのをやめて、仇敵の家を出てゆきながら、自分はいいことをしたと思つて涙をこぼした、といふことをきいた時、栄蔵もつい貰ひ泣きをした。